日本郵船vs商船三井vs川崎汽船【財務分析・海運・2022年3月期】

財務分析

財務3表を比較分析するシリーズ。

今回は、海運業界の国内上位3社である日本郵船株式会社(「日本郵船」、「NYK」、[9101])と株式会社商船三井(「商船三井」、「MOL」、[9104])と川崎汽船株式会社(「川崎汽船」、「“K” LINE」、[9107])を見比べます。

2022年3月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。

【日本郵船】BSとPL

BS関連
総資産:3兆800億円(前年比+44.9%)
流動比率:133.4% | 固定比率:135.1% | 固定長期適合率:94.1%

PL関連
売上高:2兆2,808億円(前年比+41.8%)
営業利益:2,689億円(同+275.9%)
親会社株主に帰属する当期純利益:1兆91億円(同+624.8%)

(*固定資産は繰延資産2.6億円を含む)
決算短信|日本郵船

【商船三井】BSとPL

BS関連
総資産:2兆6,867億円(前年比+28.2%)
流動比率:84.9% | 固定比率:183.2% | 固定長期適合率:105.6%

PL関連
売上高:1兆2,693億円(前年比+28.0%)
営業利益:550億円(前年は営業赤字)
親会社株主に帰属する当期純利益:7,088億円(前年比+687.1%)

決算短信|商船三井

【川崎汽船】BSとPL

BS関連
総資産:1兆5,750億円(前年比+61.6%)
流動比率:171.4% | 固定比率:129.3% | 固定長期適合率:93.5%

PL関連
売上高:7,570億円(前年比+21.0%)
営業利益:177億円(前年は営業赤字)
親会社株主に帰属する当期純利益:6,424億円(前年比+491.0%)

決算短信|川崎汽船

BSとPLの比較

コロナの打撃を受けた前年から一転、コンテナ船の運賃高止まりと円安進行により大幅に回復。3社揃って過去最高益を達成し、日本郵船の純利益1兆円突破は海運企業としては初、日本の事業会社としてはトヨタやソニーなどに続いて6社目。

3社とも営業外収益である「持分法による投資損益」の影響が大きく、純利益が昨年比で大幅に改善。当該収益は、3社のコンテナ船事業を統合し2018年に発足し、3社が共同出資しているオーシャン・ネットワーク・エクスプレス・ホールディングスONEホールディングス)によるもの。
出資比率は、日本郵船38%、商船三井31%、川崎汽船31%。

ROE分析(デュポンシステム)

ONEホールディングスから上がる営業外収益の影響で、今年度は3社とも利益率が急騰。

ROEに至っては、日本企業の一つの目安である8%を大幅にアウトパフォーム1

CS分析

3社ともパターン④のCS。ONEホールディングスのおかげで潤沢になったキャッシュを、有形資産(船舶など)の購入と借入金の返済に充当。株主への配当金も昨年対比で大幅に増加。

キャッシュ・フロー計算書分析【8パターン】

まとめ

今回は、絶好調の海運業界の上位3社の財務情報を見比べました。

ただ、手放しで喜べるかと言うとそうでもなく、悪い言い方をするとコロナの混乱に乗じた火事場泥棒に、米利上げ主導の円安による追い風が吹いた形。各社とも来期は今期を下回る予想を出しています。2

今やネットを通じて世界中の「情報」にアクセスできる時代ですが、私たちを囲む「物」はどうやって運ばれたのか?

沿岸部で見かける金属の箱「コンテナ」がインターネットに勝るとも劣らない世紀の発明であることを記した以下の本は、ビル・ゲイツも大絶賛。

『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった』

興味がある方は前書きだけでも是非チェックしてみてください。

***

(参考文献)
新版 財務3表図解分析法(國貞克則)


本分析は、2022年3月期の各社決算短信の数値を使用しています。なお、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。

本エントリーの内容は、執筆時点の情報に基づいています。
また本分析は、特定の投資等を推奨するものではありません。本ブログを参考にした投資等によるいかなる結果についても、筆者は責任を負うことはできません。投資等は自己責任でお願い致します。

脚注

  1. 「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」(伊藤レポート) 
  2. コンテナ不足が招く海運輸送費の高騰(CRE倉庫検索) 

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