財務諸表を比較分析するシリーズ。
今回は総合商社のBIG3、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事を比較します。
総合商社といえば、上記3社に住友商事と丸紅を加えた「5大商社」が思い浮かぶ方も多いと思います。
しかし、やはりトップ3社と4位以下では、規模や格付の観点では差があるように見受けられます。
特に債券投資家の人たちは格付と利回りが対応することから、上位3社を総合商社の中でも区別しているところがあります。
「しょうじ、ぶっさん、いとうちゅう」と口ずさんで覚えておきましょう。
以下では、2022年3月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。
【三菱商事】BSとPL
BS関連
総資産:21兆9,120億円(前年比+17.6%)
流動比率:130.2% | 固定比率:179.9% | 固定長期適合率:90.9%
PL関連
売上高:17兆2,648億円(前年比+34.0%)
親会社株主に帰属する当期純利益:9,375億円(同+443.3%)
●三菱商事株式会社 有価証券報告書(2022年3月期)
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/fstatement/pdf/2021_04/y2021_04.pdf
【三井物産】BSとPL
BS関連
総資産:14兆9,232億円(前年比+19.2%)
流動比率:150.1% | 固定比率:164.3% | 固定長期適合率:84.3%
PL関連
売上高:11兆7,576億円(前年比+46.8%)
親会社株主に帰属する当期純利益:9,147億円(同+172.7%)
●三井物産株式会社 有価証券報告書(2022年3月期)
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/securities/__icsFiles/afieldfile/2022/06/22/ja_103yuho_1.pdf
【伊藤忠商事】BSとPL
BS関連
総資産:12兆1,537億円(前年比+8.7%)
流動比率:131.8% | 固定比率:174.9% | 固定長期適合率:92.5%
PL関連
売上高:12兆2,933億円(前年比+18.6%)
親会社株主に帰属する当期純利益:8,203億円(同+104.3%)
●伊藤忠商事株式会社 有価証券報告書(2022年3月期)
https://www.itochu.co.jp/ja/files/security_98.pdf
BSとPLの比較
BSサイズでは三菱商事が頭一つ抜けている状況。
有利子負債が総資本の約1/3程度を占めているBS構造は3社ともよく似ています。
また売上高が二桁兆円単位である一方、売上原価も高いため、利益率が低いことも総合総社の特徴です。
ROE分析(デュポンシステム)
3社とも増収増益を達成していますが、資本効率の面でも日本企業の一つの目標であるROE 8%を大幅に上回っています。
●伊藤レポート
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf
中でも伊藤忠商事は、総資本回転率が1回を超えており、ROEが20%超えしています。
一方、売上高の規模に対して利益率が低いのは、総合商社の特徴の一つですね。
CS分析
3社ともに通常の営業活動で生み出した潤沢なキャッシュを、主に借金(借入金や社債)やリース負債の返済に回しています。
まとめ
今回は日本の総合商社トップ3、三菱商事と三井物産と伊藤忠商事の2022年3月期の財務三表をざっくり見比べました。
22年3月期は3社とも増収増益を達成しました。BS、PLともに規模は三菱商事が頭一つ抜けているものの、(その分)経営効率は三井物産や伊藤忠に軍配が上がるという結果になりました。
2022年はロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰しているので、資源権益に強みを持つ総合総社(特に商事と物産)は23年3月期の決算もどうなるか楽しみですね。
(過去の記事は、こちら↓)
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(脚注)
IFRS導入企業の場合、固定資産は「非流動資産」、固定負債は「非流動負債」、純資産は「資本」から読み取っています。また、売上高は「収益」から読み取っています。なお、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。
(参考文献)
財務3表図解分析法(朝日出版、國貞克則)
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本エントリーの内容は、執筆時点の情報に基づいています。
また本分析は、特定の投資等を推奨するものではありません。本ブログを参考にした投資等によるいかなる結果についても、筆者は責任を負うことはできません。投資等は自己責任でお願い致します。
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