財務3表を比較分析するシリーズ。
今回は、医療機器業界の国内上位2社であるオリンパス株式会社(以下、「オリンパス」)とテルモ株式会社(以下、「テルモ」)を見比べます。
2021年3月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。
【オリンパス】BSとPL
BS関連
総資産:1兆1,810億円(前年比+16.3%)
流動比率:176.7% | 固定比率:152.4% | 固定長期適合率:70.6%
PL関連
売上高:7,305億円(前年比-3.3%)
営業利益:820億円(同-11.1%)
親会社株主に帰属する当期純利益:129億円(同-75.0%)
消化器内視鏡で世界シェア7割を誇るオリンパス。新型コロナの影響を受けたものの、内視鏡事業と治療機器事業がともに2桁成長を遂げ、連結売上高は微減にとどまりました。
映像事業の譲渡に関わる損失500億円の影響で最終利益が大幅に減っているものの、これは一時的な要因のため、来期は大幅な回復を見込んでいるとのこと。
【テルモ】BSとPL
BS関連
総資産:1兆3,512億円(前年比+8.8%)
流動比率:247.9% | 固定比率:96.6% | 固定長期適合率:72.6%
PL関連
売上高:6,138億円(前年比-2.4%)
営業利益:984億円(同-11.1%)
親会社株主に帰属する当期純利益:773億円(同-9.3%)
カテーテルで国内トップ、世界でも高シェアを握るテルモ。年度前半は新型コロナの影響があったものの、着実に回復し第4四半期としては過去最高の売上収益を計上。
BSとPLの比較
BSのサイズはテルモがオリンパスを上回っているものの、売上高ではオリンパスがテルモを上回るため、オリンパスの方が資本効率がいいとも言えます。
一方、BSの安全性指標については、テルモの方が魅力的に映ります。
ROE分析(デュポンシステム)
オリンパスは、財務レバレッジを利かせ、総資本回転率もそこそこではあるものの、今期は非継続事業からの損失が大きく、利益率が大幅減となってしまったため、ROEは3.37%止まり。
テルモは、財務レバレッジと回転率がオリンパスより低いものの、コロナ禍でも利益率を保ったため、ROEは日本企業の一つの目安である8%を上回っています*。
*「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」(伊藤レポート)
CS分析
オリンパスは、本業で稼いだキャッシュと長期借入&社債発行で集めた資金を、子会社の取得及び事業譲渡に関わる費用に充てているパターン③のCS。
テルモは本業で稼いだキャッシュをもとに、有形固定資産の取得、および短期借入金の返済も進めている、パターン④のCS。
まとめ
今回は、医療機器国内トップのオリンパスとテルモの2021年3月期の財務三表をざっくり見比べました。
新型コロナの影響で医療機関への営業活動が難しかったことが想像される両社ですが、ともに売上の減少幅は最低限にとどめ利益を確保しています。
2021年度もコロナの影響がどれほど残るかは未定ですが、どちらの業績も四半期ベースでは回復基調を見せており、来期の決算は前期よりも良い結果になることが期待されます。
興味がある方は、各社の決算短信から詳細もチェックしてみてください。
オリンパス株式会社 決算短信(2021年3月期)
テルモ株式会社 決算短信(2021年3月期)
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(参考文献)
新版 財務3表図解分析法(國貞克則)
(脚注)
本分析は、2021年3月期の各社決算短信の数値を使用しています。2社ともにIFRSを導入しているため、固定資産は「非流動資産」、固定負債は「非流動負債」、純資産は「資本」から読み取っています。また、売上高は「売上収益」から読み取っています。なお、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。
本エントリーの内容は、執筆時点の情報に基づいています。
また本分析は、特定の投資等を推奨するものではありません。本ブログを参考にした投資等によるいかなる結果についても、筆者は責任を負うことはできません。投資等は自己責任でお願い致します。
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