財務3表を比較分析するシリーズ。
今回は飲料メーカー業界の国内上位2社、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(以下、「コカ・コーラ」)とサントリー食品インターナショナル(以下、「サントリー」)を見比べます。
2020年12月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。
【コカ・コーラ】BSとPL
コカ・コーラは、「綾鷹」「ジョージア」「いろはす」などを扱う日本屈指の飲料メーカーとして知られています。
総資産は、前年比128億円減(-1.3%)の9,396億円。流動比率185.6%、固定比率118.5%、固定長期適合率78.9%と、安全性指標は優良。特に流動比率が高いため、短期的な資金繰りに窮することはなさそうです。
一方、売上高は前年比2,980億円減(-11.0%)の7,920億円、営業損失が▲117億円、親会社株主に帰属する(継続事業から生じた*)当期純損失が▲71億円と、2期連続で最終赤字という結果に。
*同社は、2020年12月に当社が保有するキューサイ株式会社の全株式を売却することを決定。上記の売上高、粗利、営業利益(損失)、当期純利益(損失)はキューサイ及びその子会社の事業(非継続事業)から生じた部分を除いた金額
【サントリー】BSとPL
サントリーは、「伊右衛門」「BOSS」「天然水」などを扱う日本屈指の飲料メーカーとして知られていますが、100%子会社のオランジーナなど利益の6割以上を海外が占めています。
総資産は、前年比70億円増(+0.4%)の15,743億円。流動比率104.6%、固定比率141.6%、固定長期適合率105.4%と、安全性指標は問題なし。
売上高は前年比1,212億円減(-9.3%)の11,781億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年比-167億円(-24.2%)の522億円となったものの、COVID-19環境下で黒字確保。
BSとPLの比較
BS、PLともにサイズはサントリーの方が大きいです。
BSの構造を見ると、安全性についてはコカ・コーラに軍配が上がる印象。また、国内の販売数量はコカ・コーラが458百万ケース、サントリーが427百万ケースと僅差でコカ・コーラが上回ります。が、サントリーは、100%子会社のオランジーナなどを含め、利益の6割以上を海外が占めています。
収益性についてはどの業界もコロナの影響を受けていますが、外出・外食が大幅に減ってしまい飲料メーカーにとっても厳しい1年でした。コカ・コーラは赤字を計上していますが、そんな中でもサントリーは黒字を確保しています。
ROE分析(デュポンシステム)
コカ・コーラは、コロナ不況の煽りを受けて当期純利益がマイナスに落ち込み、ROEもマイナス。
一方サントリーは、リニューアルにより昨年よりも販売数量が伸びたブランドもあり黒字を確保したこともあり、ROEが6.79%と比較的いい数字に。(日本企業の目安となる目標ROEは8%*)
*「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」(伊藤レポート)
CS分析
コカ・コーラはPL上赤字ですが、減価償却費の影響が大きく、営業CFはプラス収支。短期借入で調達した資金と合わせて有形固定資産の取得に充てており、パターン③のCS。
サントリーは本業で稼いだキャッシュを有形固定資産の取得と長期借入の返済及び配当金の支払いに充てており、パターン④のCS。
まとめ
今回は日本の飲料メーカーの国内販売数量トップ2、コカ・コーラとサントリーの2020年12月期の財務三表をざっくり見比べました。
コカ・コーラはコロナの影響で赤字になったものの、資金繰りに窮しているわけではなくBSの安全指標は健全です。また、非中核事業の売却をするなど、経営の集中を進めています。2020年12月に販売開始した「檸檬堂」ブランドが2021年度どれだけ伸びてくるかも気になります。
サントリーも伊右衛門のリニューアルなど積極的な施策を進めて、コロナ環境下で黒字を確保しました。海外の利益が6割以上を占めていますが、国内の販売数量もコカ・コーラに迫っています。
興味がある方は、各社財務諸表の詳細もチェックしてみてください。
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(脚注)
2社ともにIFRSを導入しているため、固定資産は「非流動資産」、固定負債は「非流動負債」、純資産は「資本」から読み取っています。また、売上高は「売上収益」から読み取っています。なお、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。
(参考文献)
新版 財務3表図解分析法(朝日出版、國貞克則)
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本エントリーの内容は、執筆時点の情報に基づいています。
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