財務諸表を比較分析するシリーズ。
今回は総合商社のBIG3、三菱商事・三井物産・伊藤忠商事を比較します。
総合商社といえば、上記3社に住友商事と丸紅を加えた「5大商社」が思い浮かぶ方も多いと思います。

しかし、やはりトップ3社と4位以下では、規模や格付の観点では差があるように見受けられます。
特に債券投資家の人たちは格付と利回りが対応することから、上位3社を総合商社の中でも区別しているところがあります。
「しょうじ、ぶっさん、いとうちゅう」と口ずさんで覚えておきましょう。
以下では、2025年3月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。
【三菱商事】BS・PL

BS関連
総資産:21兆4,961億円(前年比-8.4%)
流動比率:148.8% | 固定比率:136.0% | 固定長期適合率:85.9%
PL関連
売上高:18兆6,176億円(前年比-4.9%)
親会社株主に帰属する当期純利益:9,507億円(同-1.4%)
●三菱商事株式会社 決算短信(2025年3月期)
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/ir/library/earnings/pdf/202505j.pdf
【三井物産】BS・PL

BS関連
総資産:16兆8,115億円(前年比-0.8%)
流動比率:155.6% | 固定比率:147.4% | 固定長期適合率:86.0%
PL関連
売上高:14兆6,626億円(前年比+10.0%)
親会社株主に帰属する当期純利益:9,147億円(同-15.4%)
●三井物産株式会社 決算短信(2025年3月期)
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/pdf/ja_253_4q_ta.pdf
【伊藤忠商事】BS・PL

BS関連
総資産:14兆4,897億円(前年比-4.3%)
流動比率:129.5% | 固定比率:163.4% | 固定長期適合率:92.5%
PL関連
売上高:14兆299億円(前年比-4.7%)
親会社株主に帰属する当期純利益:8,203億円(同-8.9%)
●伊藤忠商事株式会社 決算短信(2025年3月期)
https://www.itochu.co.jp/ja/ir/financial_statements/2025/__icsFiles/afieldfile/2025/05/02/25_ended_01_1.pdf
三社比較

BSサイズでは三菱商事が頭一つ抜けている状況。
有利子負債が総資本の約1/3程度を占めているBS構造は3社ともよく似ています。
また売上高が二桁兆円単位である一方、売上原価も高いため、利益率が低いことも総合総社の特徴です。
ROE分析(デュポンシステム)

3社とも、資本効率の面で日本企業の一つの目標であるROE 8%を大幅に上回っています。
●伊藤レポート
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/kigyoukaikei/pdf/itoreport.pdf
中でも伊藤忠商事は、レバレッジと総資本回転率のおかげで他の2社よりROEが高くなっています。
一方、売上高の規模に対して利益率が低いのは、総合商社の特徴の一つですね。
CS分析

3社ともに通常の営業活動で生み出した潤沢なキャッシュを、主に負債の返済とさらなる投資に回しています。
●キャッシュフロー計算書のパターン分析はこちら↓
まとめ
今回は日本の総合商社トップ3、三菱商事と三井物産と伊藤忠商事の2025年3月期の財務三表をざっくり見比べました。
BS、PLともに規模は三菱商事が頭一つ抜けているものの、経営効率の面では伊藤忠に軍配が上がるという結果になりました。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻後の資源・エネルギー価格の高騰は、三菱商事・三井物産にとって追い風となり、伊藤忠は2社の後塵を拝してきました。
しかし、「万年4位」と揶揄された伊藤忠の急成長をけん引してきた岡藤正広CEOは、闘争心をむき出しにしています。
●「何が何でもトップを取るんや」伊藤忠・岡藤氏が挑む三菱・三井との順位争い(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00108/00334/
26年3月期の商社各社の決算もどうなるか楽しみですね。
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(脚注)
IFRS導入企業の場合、固定資産は「非流動資産」、固定負債は「非流動負債」、純資産は「資本」から読み取っています。また、売上高は「収益」から読み取っています。なお、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。
(参考文献)
財務3表図解分析法(朝日出版、國貞克則)
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また本分析は、特定の投資等を推奨するものではありません。本ブログを参考にした投資等によるいかなる結果についても、筆者は責任を負うことはできません。投資等は自己責任でお願い致します。
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