財務3表を比較分析するシリーズ。
今回は、家具業界 国内1位のニトリホールディングス(以下、「ニトリ」)と、ホームセンター業界 上位のDCMホールディングス(以下、「DCM」)を見比べます。
他記事では同業界のトップ2社を比較していますが、今回は隣接する業界から選びました。ニトリとDCMは、2020年に島忠に対してTOB合戦をした2社です。
2021年2月期の各社財務諸表(BS,PL,CS)から財務分析を行いました。
【ニトリ】BSとPL
ニトリは、「お、ねだん以上。」のCMでお馴染み、家具チェーンの国内トップ企業。
総資産は、前年比2,438億円増(+35.7%)の9,270億円。流動比率146.8%、固定比率97.2%、固定長期適合率91.7%と、安全性指標は良好。
売上高は前年比746億円増(+11.6%)の7,169億円、営業利益が302億円増(+28.1%)の1,377億円、親会社株主に帰属する当期純利益が207億円増(+29.0%)の921億円となり、コロナ環境下で増収増益を達成*。
*なお、ニトリは2020年11月から12月にかけて島忠の普通株式の全てを対象とする公開買付けを実施し、2021年1月に同社はニトリの連結子会社となりましたが、2021年2月期はBSのみ島忠を連結、PLには島忠の業績を反映していません
【DCM】BSとPL
DCMは、ホーマ、カーマック、ダイキの経営統合で誕生したホームセンター業界2位の企業。
総資産は、前年比561億円増(+12.9%)の4,908億円。流動比率176.6%、固定比率121.1%、固定長期適合率75.9%と、安全性指標は良好。
売上高は前年比342億円増(+8.0%)の4,642億円、営業利益が94億円増(+45.2%)の303億円、親会社株主に帰属する当期純利益が48億円増(+34.9%)の186億円となり、こちらも増収増益。
BSとPLの比較
BS, PLともにサイズはニトリがDCMを上回ります。比較してみるとニトリは利益剰余金が相当積み上がっていることが分かります(島忠買収前からです)。また、ニトリは有利子負債が総資本の6.3%と無借金に近い状態です。
会社のサイズだけで決まるわけではないにせよ、TOB合戦になった場合、財務体質もがっちりしている方が有利なのは間違いなく、ニトリに軍配が上がったのも納得です。
ROE分析(デュポンシステム)
ニトリは、島忠買収により(BSは連結、PLは未反映のため)総資本回転率ではDCMを下回るものの、利益率がとても高く、15.32%と高ROEを記録しています。これだけ利益率が高いと、利益剰余金が相当積み上がっているのも説明がつきます。
一方DCMは、利益率ではニトリに及びませんが、財務レバレッジと総資本回転率ではニトリを上回り、ROEは日本企業の一つの目安である8%を上回っています*。
*「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」(伊藤レポート)
CS分析
ニトリは本業稼いだキャッシュに加え、短期借入金で調達した資金で、島忠を約2142億円で完全子会社化(うちTOBでの取得分は1650億円)。パターン③のCS。
DCMは本業で稼いだキャッシュと長期借入金をもとに有形固定資産の取得に当てており、同じくパターン③のCS。
まとめ
今回は、昨年島忠を巡ってTOB合戦をした、家具トップのニトリとホームセンター大手のDCMの、2021年2月期の財務三表をざっくり見比べました。
島忠争奪という切り口で2社を選びましたが、家具・ホームセンターともにコロナ環境下では巣篭もり需要でむしろ追い風が吹いていることが分かり、2社とも増収増益を達成しました。このタイミングで島忠を手中に収めたかったというのが両社共通の戦略だったのではないでしょうか。
興味がある方は、各社の決算短信から詳細もチェックしてみてください。
株式会社ニトリホールディングス 決算短信(2021年2月期)
DCMホールディングス株式会社 決算短信(2021年2月期)
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(2021/7/16追記)DCM、テーオーHD系に18%出資
埼玉県が地盤の島忠を取り損ねたDCM、次は北海道のホームセンターに食指を伸ばそうということでしょうか?
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(脚注)
本分析は、2021年2月期の各社決算短信の数値を使用しています。また、本分析は財務三表から企業の財政状態、経営成績を大まかに把握するためのものであり、四捨五入の関係で端数が完全一致しない場合があります。
(参考文献)
新版 財務3表図解分析法(國貞克則)
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本エントリーの内容は、執筆時点の情報に基づいています。
また本分析は、特定の投資等を推奨するものではありません。本ブログを参考にした投資等によるいかなる結果についても、筆者は責任を負うことはできません。投資等は自己責任でお願い致します。
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